子どもがお腹が痛がる時は急です。正直な子どもは、隠そうともしないので、痛がる様子を見ていると、いてもたってもいられなくなります。
腹痛を訴える病気の中には腸重積や急性虫垂炎などの、急いで診断して治療しないと大変なことになる病気もあるので診断を急ぐことがあります。
夜間休日でもすぐに診察を受けた方がいいことがあるのですが、いざ受診してみると、なんでもない便秘による腹痛も多いのです。
子どもがお腹が痛いと言ってお腹を押さえていたら、最後の排便を思い出してください。半日以上前から排便がないのなら、とりあえず、浣腸して間違いないです。
毎日排便があっても、それが固い便なら、便秘がちな子どもだと思われていなくても、固い便が大腸に貯まっていることがあります。
便秘による腹痛なら、1回か2回の浣腸で痛みは取れて、受診の必要が無くなります。
急性の胃腸炎の初期症状が腹痛のことも多いです。この場合は、嘔吐も伴うことが多いので、家族の方の心配度はさらに高いものがあります。
この場合でも浣腸は効果と意味があります。
お腹の中にいる病気の原因の悪いウイルスや細菌は、なるべく長くお腹の中に留まって、なるべく多くの人に病気をうつして自分の仲間を増やそうという魂胆をもっています。胃腸炎になっても、すぐには下痢にはならないほうが、病原体には腸内に長くいられるので好都合なのです。
腸が荒れるので痛くて、嘔吐はあるのに、下痢は初めのうちは無くて、お腹の音を聞くと腸音が減弱していることがよくあります。このままでは、腹痛が消えませんし、嘔吐も続いて、胃腸炎は長引きます。
急性胃腸炎の初期に浣腸してあげると、大腸の先にある固い目の便が排泄されて腸内の圧力が下がって腹痛が和らぎます。これをきっかけに、悪い病原体のいる不消化便も排泄されれば、それが引き起こしていた嘔吐も止まりやすくなります。結果として病気が早く治ることになります。
腸重積や急性虫垂炎などの急性腹症と急性胃腸炎の鑑別は小児科医にとって、代表的な陥りやすい落とし穴です。家で浣腸してもいいのかという疑問もあるでしょうが、基本的に大丈夫です。虫垂炎が続いて破裂・腸穿孔する大部前から腹痛はありますので、腹痛ですぐに浣腸で腸が破裂したりはしません。腸重積は、浣腸便でイチゴジャム状便を見て診断するくらいなので、診断に浣腸は必須です。
腹痛に浣腸は怖くありません。家庭には浣腸を常備しておいて、お腹を痛がったら、とりあえずは浣腸してください。浣腸で腹痛が消えればとりあえずは診察の必要はないので様子観察でいいでしょう。
浣腸しても腹痛や他の症状が続くなら、出てきた便を持って受診して下さい。もし、血便が出たら急いでください。重篤な病気の可能性が高くなります。
医師はその便を診断の材料に利用できますので、大助かりです。迅速検査や培養検査に使えるので正確な診断ができます。